わんちゃんが腎臓病だと診断されたとき、多くの動物病院で療法食をすすめられると思います。しかし、普段からこだわりが強いわんちゃんや食欲が落ちているわんちゃんは、療法食への変更が難しいことも。
「療法食をすすめられたけれど食べてくれない」「療法食以外で食べても良い食材はないのかな？」とお悩みの飼い主さんは、是非最後までご覧ください。
腎臓病の原因は何？
腎臓には「排泄」「ホルモンの分泌」「代謝」などの機能があります。腎臓病は、これらの機能が何らかの原因で障害され、血液中に不要な老廃物が溜まってしまう状態を言います。
腎臓病を大きく分けると急性腎臓病と慢性腎臓病があります。急性腎臓病は、感染症などで起こりますが、慢性腎臓病は、遺伝や老化などが原因とされていて、はっきりと分からないことも多いです。
どんな症状が出るの？
慢性腎臓病は、腎臓の機能でステージ１～４に分けられます。
ステージ２までは、ほとんど症状が見られないことも多いですが、ステージが進むにつれて、食欲不振、多飲多尿、嘔吐、下痢、口内炎などの症状が現れます。食欲が無くなることから、体重の減少や脱水なども見られるようになります。
何故食事制限が必要なの？
腎臓病と診断されたら注意するべき成分について解説します。腎臓病と診断されたら、タンパク質、ナトリウム、リンを制限します。これは腎臓の負担を軽減するためです。
高カリウム血症の場合には、カリウムの制限が必要なこともあります。何故、これらの成分を制限しなければならないのかご説明します。
タンパク質
腎臓の機能が低下すると、タンパク質を代謝するスピードが落ちるため、なかなか体の外へ老廃物を出すことができません。そのため、タンパク質を制限する必要があります。腎臓病療法食は、タンパク質を抑え、替わりに「糖質」と「脂質」でカロリーを補っています。
このように、タンパク質を適量にすることは大切ですが、一方で体を構成する要素であるため、過度に制限するのは危険です。制限しすぎると体は筋肉を分解し、タンパク質を利用しようとします。それにより、却って腎臓に負担をかけてしまうこともあります。
特に、食欲がないときには、十分なカロリーを摂れなくなってしまうため、過度にタンパク質を制限してはいけません。
リン
リンは、骨や歯を構成するなど、体に不可欠な成分ですが、腎臓から排泄されるので、腎機能低下により体に溜まってしまいます。血中のリンが多い状態が続くと血管内でカルシウムと結合して石灰化を起こし、骨がもろくなることがあります。
そのため、リンの制限が必要となりますが、リンはタンパク質の多いものに多く含まれているため、タンパク質を摂るとリンも一緒に摂取することになります。
先ほどお話したように、タンパク質をある程度制限することは大切ですが、制限しすぎるわけにもいかないため、リンを抑えた食事は難しく、リンを吸着するサプリメントが使われることもあります。
ナトリウム
ナトリウムもタンパク質やリンと同様、腎臓で排泄されます。腎臓の機能が低下していると、ナトリウムが上手く排泄できず、体に溜まります。ナトリウムは水とセットで体を巡っているので、ナトリウムが排泄できないと、水も一緒に体に溜まることになります。これがむくみです。
体内の水が上手く排出できない状態が続くと、全身の血液を循環させる心臓にも負荷がかかります。重度になると、全身の循環がスムーズにできず、肺に水が溜まってしまう肺水腫を起こすこともあります。
犬の腎臓病に良い食べ物ってあるの？
食事制限の話をしてきましたが、「腎臓に良い食べ物は無いの？」と飼い主さんから質問をいただくことがあります。
腎臓を保護する働きが期待できる成分がいくつかあるのでご紹介します。腎臓を保護する働きがあると期待されている成分には、「オメガ3脂肪酸」「ビタミンE」「ビタミンC」などがあります。
オメガ3脂肪酸には、抗炎症作用をもつ物質を生産する作用があり、食事で適量を摂ることで、腎臓を保護するといわれています。食材として、オメガ3脂肪酸を含むものは、魚油や亜麻仁油などがあります。
また、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化作用をもつビタミンを摂ることは、活性酸素による腎臓の細胞の障害を防止する効果があると言われています。
ただし、これらの成分がどれくらい腎臓を保護するのかについては個体差があり、データも乏しいのが現状です。また、いくら腎臓を守るといっても、十分に食事が摂れなければ、本末転倒です。
腎臓病の食事を考えるときには、制限が必要な成分を適量に抑え、栄養バランスの摂れた食事をすることの方が大切です。腎臓を保護するとされる栄養素については、「可能であれば取り入れる」くらいのものと考えるのが良いでしょう。
腎臓病療法食って実際どうなの？
腎臓病療法食は、腎臓病のわんちゃんに適した栄養素が過不足なく調整されています。このように栄養素を適切に調整することは難しいため、わんちゃんが問題なく療法食を食べてくれるなら、療法食のみを与えるのが成分的には理想です。
ただ、療法食は味が好まれないことも多いので、切り替える際は、今までの食事を1割ずつ療法食に置き換えるなど慎重に移行する必要があります。焦らず、10日くらいかけて、徐々に慣らしていくと食べてくれる確率が高まります。
療法食を食べてくれないときは？
徐々に移行しようとしたけれど、わんちゃんの好みや体調によっては、どうしても食べてくれないこともあると思います。腎臓という臓器のことだけを考えると、療法食が理想ですが、食べてくれないことには体を維持することができません。
また、病状がすすむと食欲がなくなり、食べられないことも考えられます。療法食を食べないときはどうすればよいか、対処法について見ていきましょう。
まずは動物病院で相談を！
「療法食をすすめられたから」といって、無理に療法食を続けることは避けましょう。食べられなくて痩せてしまうと体力がなくなり、悪循環になってしまいます。
動物病院に相談することで、サプリメントを使ったり、普通の食事や食べられる食材の中で、なるべく腎臓に負担の少ないものを選択したりと他の選択肢を手にすることができます。
また「食べないから、ほかのごはんをネットで検索！」という飼い主さんもいらっしゃると思いますが、その際も、まずは「療法食を食べない」ということをかかりつけの動物病院に相談してください。
可能な限り適切な栄養素を適量摂ることが重要となるため、療法食を食べないからといって、「何となく良さそうなごはん」に飛びつくのではなく、わんちゃんの体調に合わせた食事を選ぶことが大切です。
療法食を食べないときの対処法①：少しだけトッピングをする
療法食を食べてくれない場合、食事全体のカロリーの1,2割程度であれば、療法食の成分への影響は少ないため、療法食の効果がある程度期待できます。以前使用していたフードをトッピングとして使用するのも一案です。
食べられるものがいくつかある場合には、リン、ナトリウム、カリウムが少ないものを選びます。例えば、同じ肉でも、筋肉部分の方が内臓よりもリンが少ないです。レバーはリンが多い部位なので、どうしてもそれしか食べない場合を除き、控えるようにしましょう。
魚であれば、ブリやタラ、マグロ、塩をふっていないサケなどを茹でて使用するのも良いでしょう。タンパク質については過剰摂取を控える必要があるものの、体を維持するためにある程度必要です。
野菜が好きなわんちゃんなら、にんじん、大根、じゃがいもなどもおすすめです。さつまいもはカリウムを多く含むため、毎日与えるのは避けましょう。
療法食を食べないときの対処法②：とにかく食べるものを食べさせる
食欲が無く食べない場合、栄養失調や脱水になってしまうことがあります。状態によっては、食材を選好している場合ではなく、かかりつけの先生から「食べるなら何でも食べさせて」と言われることもあると思います。その際は、細かい成分よりも食べることを優先してください。
肉や魚を茹でたものをごはんと混ぜて、お粥のようにすると食べてくれることが多いです。わんちゃんは、甘味を好む傾向があるので、少量のオリゴ糖シロップで甘味をつけるのもよいでしょう。
また、香りの強いものを食べたがるわんちゃんもいます。馬肉や鹿肉など香りの強いお肉なら何とか食べてくれるというわんちゃんも多いです。
まとめ
腎臓病になったら、栄養が調整された療法食を与えるのが理想です。
ただ、療法食を食べられないときには、わんちゃんの好みや体調に合わせて食事を選択しましょう。出来る範囲で抑えるべき成分に注意しながら、生活の質を維持してあげることが大切です。
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